PPG工法を知るための4つのポイント
POINT1 PPG工法の概要
PPG工法は、杭状地盤補強材(以下、鋼管と呼ぶ)の先端支持地盤を有効に利用するため、鋼管径の3倍程度の螺旋翼(先端拡底翼)を取り付けた拡底型と地盤の摩擦力を有効に利用するため、鋼管径より外側に突出するものが無く、鋼管先端(完全閉塞)に掘削刃を付けたストレート型の2種類から構成されている。本工法は、上記の鋼管を回転貫入し、基礎下部に配置する工法である。鋼管頭部に回転トルク及び圧入力を与えることによって地中埋設し、地上部では、無排土の状態で回転貫入することが出来る。また、低騒音・低振動での施工が可能であり、先端根固めやプレボーリング等を必要としないことから、排土処理が一切不要であり、土壌汚染の心配がなく、環境に与える負荷の小さい工法である。
建築技術性能証明書
POINT2 鋼管の仕様・特長・対策
- 拡底型・ストレート型の2タイプ。地盤特性に合わせて選択できます。
- 環境に優しい「回転圧入工法」。低振動・低騒音・無廃土です。
- 支持地盤土質を選びません。粘土質・砂質(レキ質含む)に対応。
- 鋼管杭種…5タイプ Φ89.1、Φ101.6、Φ114.3、Φ139.8、Φ165.2 過剰設計回避。
- 支持力特性は、拡底…先端支持系・ストレート…摩擦支持系 の2通り。
- 先端拡底翼は一枚の板からなり、剛性が高くなっています。
- 低価格対策①…高い貫入能力により施工機械を小型化。
- 低価格対策②…管材流通コストをスリム化。
- 万全な設計・施工管理。PPG工法協会による徹底管理。
- 低層小規模住宅に特化。必要最小限の鋼管仕様に限定化。
PPGの構成(2タイプ)
POINT3 多彩な採用効果
埋土対策
盛土対策
液状化対策
腐植土対策
擁壁対策
斜面対策
環境対策
産廃対策
POINT4 PPG適用範囲
適用地盤
鋼管先端地盤は、粘土質地盤、砂質地盤または礫質地盤とする。
周面摩擦力考慮地盤は、粘土質地盤、砂質地盤及び礫質地盤とする。
最大施工深さ
施工地盤面から10m以下とする。ただし、表層から軟弱層が続きスクリューウェイト貫入試験(以後SWS試験と呼ぶ)で地盤調査が可能な場合で、SWS試験結果が既存資料や近隣の標準貫入試験(以後SPT試験と呼ぶ)結果より適切であることが確認できる場合には、補強材の最大施工深さは130Dとする。
仕様 | 長さ |
鋼管軸部径 φ89.1mm | 11.58m |
鋼管軸部径 φ101.6mm | 13.20m |
鋼管軸部径 φ114.3mm | 14.85m |
鋼管軸部径 φ139.8mm | 18.17m |
鋼管軸部径 φ165.2mm | 21.47m |
適用建築物
適用する建築物の規模は、以下を全て満足するものとする。
①地上3階以下 ②高さ13m以下 ③延べ面積1,500㎡以下(平屋に限り3000㎡以下)
PPG工法の設計・施工フロー
PPG工法は主として、低層住宅の地盤対策用として開発されています。他の小口径鋼管を用いた工法と比較して管径が小さいのが特徴です。これは低層住宅で採用されている基礎形状の特性に合わせて鋼管を配置する場合に、鋼管に求められた必要性能が過剰材とならない事を狙った仕様です。そのため経済的な工法となっています。
PPGの設計フロー
1 地盤状況から 鋼管種別の選択 拡底型 ストレート型 PPG拡底型とストレート型は、支持力機構が大きく違い、先端支持力を有効に利用した拡底型PPG と、鋼管周面摩擦力を有効に利用したストレート型PPGの特性を考慮し、土質及び地盤状況に合わせて、適切な鋼管種を選定する。 |
2 建物荷重の仮定 建物構造(在来工法・枠組み工法・ ユニット工法・鉄骨造・鉄筋コンクリ ート造等)と各階床面積及び基礎構造から建物総重量の目安を算 出する。建物総重量、軸力、設計接地圧等が分かる場合は、その数値を採用する。 |
3 鋼管配置の仮定 基礎構造、建物重量を考慮し、鋼管を配置する。 |
4 鋼管頭部荷重Pの仮定 仮定した建物荷重、軸力、鋼管の割付本数等から鋼管頭部に作用する長期荷重を求める。 |
5 鋼管仕様の仮定 鋼管長Lと鋼管サイズ(鋼管軸部径、肉厚)を仮定し、鋼管先端平均N’を設定する。鋼管先端部の位置は、上図の条件で仮定する。 |
6 地盤で決まる許容鉛直支持力Raの算定 |
7 銅管軸部の許容軸方向力Raの算定 |
8 min(Ra, Ra’)≧P NOの場合3鋼管配置の仮定からやり直す |
9 ねじり強度≧施工想定トルク NOの場合3鋼管配置の仮定からやり直す |
10 鋼管配置・ 鋼管仕様の決定 |
PPGの施工フロー
1 PPG材現場搬入
|
2 試験鋼管施工
|
3 PPG施工
※試験鋼管は地盤調査至近の位 置とする。試験鋼管は本設鋼 管を兼ねることができるもの とする。 |
3-1 継ぎ鋼管施工 ※継ぎ鋼管のある時
|
3-2 打ち止め確認
|
4 施工確認
|
5 施工終了 |
支持力特性
抗先端支持力の算出ポイント
- 拡底型の場合N’≧7
- ストレート型の場合 N’≧3
粘性土地盤では、
N’=15を超える場合は15とする。
砂質土地盤では、
N’=20を超える場合は20とする。
拡底型の場合先端部の換算N値は最大20が利用できます |
抗周面摩擦力の算出ポイント
砂質土部分では、N値1.5以下を0とし、N値10を超える場合は10とする。粘性土部分では、N値1.5以下を0とし、N値8を超える場合は8とする。
ストレート型の場合 摩擦力が大きく、支持層が無くても設計が可能 |
施工特性
一般工法の1Pピッチと比較して1Dwピッチでの施工が可能であり、 抜群の施工性 |
先端部特性
掘削面の形状により、 推進力が向上 |
周面地盤を乱さない位置に爪を配置し 先端閉塞することで支持力増大 |
先端翼部応力特性
拡底部の部材は鉛直力に対する応力に強い構造です |
PPG開発・実験(載荷試験・材料応力確認)
PPG工法の支持力算定
地盤で決まる許容支持力 Ra の算定
地盤で決まる長期許容支持力は、次式によって算定する。
短期については長期の2倍とする。
LRa=(1/3)Ru
解説
|
極限支持力Ruは、SWS試験の結果から次式で算定する。
Ru=aswN’Ap+(βsw Ns’ Ls+γsw Nc’ Lc)ψ
解説
砂質土地盤の場合 N’=2Wsw+0.067Nsw ・・・式1 |
表(1)SWS用の支持力係数一覧
杭種 | 支持力係数 | 鋼管先端部の範囲 | 鋼管先端有断面積 Ap(㎡) |
鋼管周長 ψ(m) |
||
αsw | βsw | γsw | ||||
拡底型 | 241 | 1.5 | 1.7 | 鋼管先端部より 上へ1Dw 下へ1Dw |
πD2/4+0.5(πDw2/4-πD2/4) | πD |
ストレート型 | 239 | 5.1 | 9.0 | 鋼管先端部より 上へ5D 下へ2D |
πD2/4 | πD |
表(2) 拡底型の仕様
適用鋼管 | 先端翼部 | ||||
鋼管径 D(mm) |
肉厚 t(mm) |
管材質 | 鋼管径 Dw(mm) |
翼部肉厚 tw(mm) |
材質 |
89.1 | 4.2-5.5 | STK400 STK490 |
250 | 9 | SS400 |
101.6 | 4.0-6.0 | STK400 STK490 |
250 | 9 | SS400 |
101.6 | 4.0-6.0 | STK400 STK490 |
300 | 12 | SS400 |
114.3 | 3.5-6.0 | STK400 STK490 |
300 | 12 | SS400 |
114.3 | 3.5-6.0 | STK400 STK490 |
350 | 12 | SS400 |
139.8 | 4.5-6.6 | STK400 STK490 |
400 | 16 | SS400 |
165.2 | 4.5-11.0 | STK400 STK490 |
450 | 16 | SS400 |
※注 地震時に液状化するおそれのある地盤(液状化発生の可能性があると判定される土層及びその上方にある土層)においては、長期荷重時における補強地盤の支持力は考慮しないこと、液状化が生じるか否かは設計者判断となっています。
表(3)ストレート型の仕様
適用鋼管 | 先端翼部 | ||||
鋼管径 D(mm) |
肉厚 t(mm) |
管材質 | 外径 D(mm) |
蓋部肉厚 tw(mm) |
材質 |
89.1 | 4.2-5.5 | STK400 STK490 |
89.1 | 6 | SS400 |
101.6 | 4.2-5.5 | STK400 STK490 |
101.6 | 6 | SS400 |
114.3 | 4.2-5.5 | STK400 STK490 |
114.3 | 6 | SS400 |
139.8 | 4.2-5.5 | STK400 STK490 |
139.8 | 9 | SS400 |
165.2 | 4.2-5.5 | STK400 STK490 |
165.2 | 9 | SS400 |
※注 地震時に液状化するおそれのある地盤(液状化発生の可能性があると判定される土層及びその上方にある土層)においては、長期荷重時における補強地盤の支持力は考慮しないこと、液状化が生じるか否かは設計者判断となっています。
鋼管軸部の許容軸方向力 Ra’ の算定
鋼管軸部の許容軸方向力LRa’の算定は次式による。短期は長期の1.5倍とする。
LRa’=As{Lƒc(l-a-b)}
解説
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許容軸方向力の算定に際しては、下記の項目を考慮する。
(1)腐食しろ・・・
建設省(現国土交通省)住宅局建築指導課長通達123号、建築用鋼管杭施工指針・同解説(鋼管杭協会)により腐食しろの値は、鋼管の外面1mmとする
(2) 許容圧縮応力度 ・・・
鋼管軸部の許容圧縮応力度から許容軸方向力を決定する。なお、短期許容圧縮応力度は、長期許容圧縮応力度の1.5倍とする。長期許容圧縮応力度Lfcは、管の局部座屈を防ぐため、腐食しろを除 いた鋼管軸部内厚さを鋼管軸部半径rで除した数値が0.08以下の場合には次式に示す低減率(平 成13年国土交通省告示1113号)を用いる。
Lƒc= Lƒt Rc
Rc=0.80+2.5(t-c/r)
解説
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継手の低減
(1)溶接継手・・・ 1ヶ所あたり5%
(2)機械式継手・・・ 継手性能に応じた低減
長さ径比低減
b=(L/D-100)/100
b:長さ径比による低減L:鋼管長(m) D:鋼管軸部径(m)
抗頭処理例
水平載荷試験例
打ち止め管理
PPG工法には、2種類の打ち止め管理手法があります。
①トルク値による場合
試験抗で地盤データとトルクの対比表を作成して、打ち止め管理トルク値を設定する |
②回転貫入量による場合
設定N値部分の地盤で、5cm貫入させるのに必要な回転数を求める。 |
機械式継ぎ手
鋼管継手には、溶接・機械式継ぎ手が採用できます。機械式継ぎ手は、「パイルフィット」「イージーロック」を採用。施工が早く、無火気、安定品質が可能です。
動的貫入試験(ラム サウンディング試験)を併用して確実な支持層確認
小型軽量化したラムサウンディング試験機を自社で開発。 SWS試験と併用すると効果的です。 SWS試験では確認することが難しい支持層を事前に確認して設計・施工することが重要です。 |
標準貫入試験・SWS試験・ラム試験対比
各部名称
PPG工法許容支持力早見表
各タイプで、先端支持力のみで考慮した場合(SWS試験の換算平均N値より求めた場合)
ストレートタイプで、周面摩擦力を考慮した場合(SWS試験の換算平均N値より求めた場合)