トルネードラフト工法
トルネードラフト工法とは
トルネードパイルと基礎で支持するパイルドラフト工法です。
本工法は、基礎の支持力向上及び沈下量低減を図るため、2020年7月20日に(一財)日本建築総合試験所建築技術性能証明 第20-06号として、性能証明されたトルネードパイル工法の支持力性能と基礎スラブによる、補強体開地盤の支持力性能を利用した複合地盤補強工法です。
トルネードラフト 工法の特長
基礎底面の支持力を 有効に活用します
本工法では、小規模建築物の現状に即した支持力機構(改良体支持力+地盤支持力)により支持力性能の検証を行うことで、トルネードパイルおよび基礎スラブの双方が有効に作用し、複合的な支持力性能を評価する事が可能となりました。
トルネードラフト工法を用いて経済性UP
本工法では改良体間地盤の支持力性能を適切に評価することが出来るため、補強体部分に荷重が集中することなく、複合地盤として一様に支持力剛性が向上します。 従って、従来の杭状地盤補強に比べ、基礎梁にはたらく応力が減少し、適切な配筋量及び適切な断面での設計が可能となります。
適用範囲
本工法の適用建築物は以下の通りです。
適用 範囲 |
地盤 | 建築物 | 基礎形式 | 工作物 | 鋼管長 |
(1) | 先端地盤:粘性土地盤、砂質土地盤(礫質土地盤を含む)、ローム地盤 | 地上階:3階以下 | ベタ基礎 | 高さH=3.5m以下の擁壁 | 最大:8m |
(2) | 周面摩擦考慮地盤:粘性土地盤、砂質土 地盤(礫質土地盤を含む)、ローム地盤 | 建物高さ:13m以下 | 布基礎 | ボックスカルバート等 | 最小:0.5m |
(3) | 基礎接地面地盤:粘性土地盤、砂質土地盤 | 基礎の設計接地圧:100kN/㎡以下 | |||
(4) | 延べ面積:1000㎡以下 |
トルネードラフト工法の魅力
摩擦力が大きく優れた支持力
トルネードラフト工法は、鋼管杭工法の安定した材料強度とソイルセメントコラム工法の大きな摩擦力を合成させることにより、ソイルセメントコラム工法の短所であるコラム強度のバラツキを鋼管が補い、鋼管杭工法の短所である小さな摩擦力をソイルセメントコラム工法が補うことで、各工法の短所を打ち消し、高い支持力を発揮することができます。
良好な品質を確保!
芯材に使用する鋼管は、一般的に使用されている冷間製造の鋼管ではなく、熱間製造の鋼管を使用しており、造管ラインにて段付の鋼管を製造し、付着力の増大を考慮した鋼管として利用するものです。
安全性の比較
ソイルセメントコラムは、頭部周辺に応力が集中するため、固化不良や土塊の混入があると補強体が崩壊してしまうのに対し、トルネードパイルは、芯材効果により応力集中を防ぐと共に、芯材全長で支えていることから一部分に固化不良が生じた場合でも影響を回避できます。
腐植土地盤における適用性
腐植土により固化不良が発生する地盤の場合、ソイルセメントコラムは強度を確保出来ないのに対し、トルネードパイルは、芯材の摩擦力(付着力)が大きいため、芯材の材料強度(80~166kN)及び腐植土部分を除いた支持力の小さい方まで設計考慮することができます。
優れた環境性能
高支持力化に伴い、施工長の短縮が可能。 製造時、CO2発生量の多い鉄やセメント系固化材の使用量を大幅に縮小。 施工時の発生残土量及び施工設備の排気ガスについても大幅に減少することができ、環境に配慮した工法です。
トルネードパイル工法の配置例
トルネードパイルの仕様
ソイルセメントコラムの仕様
トルネードパイルの概略図
※施工実績のない固化材を使用する場合は事前に配合試験を行う
表1固化材の種類
トルネードパイルの組み合わせ一覧
トルネードパイルは、高支持力で補強体強度が強い
らせん溝付鋼管の仕様
らせん溝付鋼管
最新鋭設備で特殊加工技術を用いて生産します!
施工手順
第3者認証歴20年のノウハウがあります
複合補強体は曲げやせん断に強い
撹拌装置
ソイルセメントコラム築造には30年の実績があります
コンパクトな設備で狭小地に対応します
施工設備概要図
トルネードラフト工法の許容鉛直支持力1
本工法で補強された複合地盤の許容鉛直支持力度qaは、式1の通り、地盤の極限支持力度qdと補強体の許容鉛直支持力Ra、及び1本当たりが負担する基礎の支配面積Afに対する改良率as から求める。
qa = 1/Fs〔qd・(1-as)+Ru/Ap・as〕=1/Fs qd・(1-as)+Ra/Ap・as
・・・式1
ga:複合地盤の許容鉛直支持力度(kN/m)
Fs:安全率(長期:3, 短期:1.5とする)
gd:補強体間地盤の極限支持力度
as:改良率
as=Ap/Af
AP:補強体の断面積(m2)
Af:補強体1本当たりが負担する基礎の支配面積(m2)
図1に支配面積の設定例を示す
Ru:補強体の許容鉛直支持力(kN)
Ra:補強体の極限鉛直支持力(kN)
図1補強体が負担する基礎の支配面積設定例
地盤の極限支持力度qdは、式2の通り、日本建築学会『小規模建築物基礎設計指針』(以下、小規模指針と称す)に示された支持力度算定式により求める。
qd=(30×Wsw+0.64XNsw)×3
・・・式2
qd:補強体間地盤の極限支持力度(kN/m2)
Wsw:SWS試験における静的貫入最小荷重(kN)
Nsw:SWS試験における換算半回転数
ただし、0.3≦Wsw≦1、0≦Nsw≦80とし、
Wsw 、Nswは、それぞれ基礎底面より2m範囲内の平均値とする。
パイルドラフト(複合地盤)は、
直接基礎・杭基礎と並ぶ新しい基礎技術です
許容鉛直支持力2
トルネードパイルの仕様は、負担荷重により鋼管長Lを設定して、先端支持力及び周面摩擦力を考慮する部分を設定し、先端地盤の平均N’値(N’s値)及び周面地盤の平均N’値(N’f値)を求めて設定する。 ここで、先端地盤の平均N’値は、図2に示す先端平均N’値を算定する範囲(芯材先端から800㎜以内)の平均N’値と、先端支持地盤の層厚(鋼管先端より400㎜深い深度から3Dの範囲)の25㎝毎のN’値を比較し、最も小さい値をN’sとして求める。 また、周面地盤の平均N’値は、図1に示す周面地盤の平均N’値を算定範囲(鋼管長+400㎜)より算出しN’fとして求める。ここで、先端支持地盤の層厚とは、先端支持力を確実に確保するため、応力影響範囲を考慮するための層厚で、鋼管先端より400㎜深い深度から3Dの範囲と定義するものである。 また、余長を400㎜以上とする理由は、支持力が確保出来ていた場合でも、沈下量を軽減するために改良長のみ長く確保する場合があるためである。
N’の算定はSWS試験結果より、土質に応じて式3、式4を用いて行う。 また、先端地盤及び周辺地盤の平均N’値の適用範囲は表2の通りとする。
砂質土地盤の場合
N’=2Wsw+0.067Nsw
・・・式3
粘性土地盤の場合
N’=3Wsw+0.05Nsw
・・・式4
Wsw:SWS試験における静的貫入最小荷重(kN)
Nsw:SWS試験における換算半回転数
鋼管長(L) | 先端地盤 | 周面地盤 | ||
個々のN’値 | 平均N’値 | 個々のN’値 | 平均N’値 | |
0.5m≦L≦2.0m | 0.8≦N’≦19.0 | 3.0≦N’s≦14.0 | 0.15≦N’≦18.0 | 0.6≦N’f≦7.5 |
2.0m≦L≦6.0m | 0.15≦N’≦19.0 | 1.5≦N’s≦14.0 | ||
6.0m≦L≦8.0m | 0.3≦N’s≦14.0 |
表2 先端地盤及び周面地盤のN’値の適用範囲
※SWS試験とは、JIS A 1221:2020 スクリューウェイト貫入試験方法の略である。(旧名称:スウェーデン式サウンディング試験)
許容鉛直支持力3
許容支持力Raの算定は、次式による。
Ra-min(Ra’, Ra1)
・・・式5
ここで、Ra’は、地盤から決まるトルネードパイルの許容支持力であり、Ra1は、トルネードパイルの圧縮耐力である。 以下その算定方法を示す。
【地盤から決まるトルネードパイルの許容支持力Ra’】
Ra’=Ru’/ Fs =(αN’s Ap+βγ N’fLψ ) / Fs
・・・式6
Ra’:地盤から決まるトルネードパイルの許容支持力
Ru’:地盤から決まるトルネードパイルの極限支持力
Fs:安全率 長期(常時)=3.0、短期(中地震時)=1.5
α:先端支持力係数=142
βγ:周面摩擦力係数=14.3
N’s:先端地盤の平均N’値
Ap:補強体の断面積
N’f:周面地盤の平均N’値
L:周面地盤の長さ(m)
γ:補強体の周長(m)
【トルネードパイルの圧縮耐力Ra1】
Ra1 = Ra1”+min(Ra1′, Ra1”’)
・・・式7
Ra1′ = -1/Fs Py×(1-a)
・・・式8
Ra1’:らせん溝付鋼管の圧縮耐力(kN)
Py:短期圧縮
Fs:安全率 長期(常時)=1.5、短期(中地震時)=1.0
a:継手低減率
継手は、スリーブ継手または溶接継手とし、次式に示すように、継手一カ所あたり5%の低減をする。
a=5×m×0.01
・・・式9
m:継手箇所数
外径d(mm) | 48.6 | 63.5 | 76.3 | 89.1 | 101.6 | 114.3 |
短期圧縮耐力PY (kN) | 120 | 120 | 145 | 189 | 219 | 249 |
らせん帯付き鋼管の短期圧縮耐力
※トルネードパイル工法性能証明を引用
ソイルセメントコラムに鋼管芯材を入れるので地震に強い
本工法は、ソイルセメントコラムが未固化状態の時にらせん溝付鋼管を建て込むため、鋼管の鉛直性(傾斜)を容易に確保出来ると共に施工時に座屈の問題は発生しない。 また、らせん溝付鋼管はソイルセメントコラムで周囲を拘束されることから局部座屈の恐れはないので、長さ径比低減は施さない。
Ra1” = -1/Fs Fc×As
・・・式10
Ral”:ソイルセメントコラムの圧縮耐力(kN)
Fc:設計基準強度(kN/m2)
Fs:安全率 長期(常時)=3.0、短期(中地震時)=1.5
As:ソイルセメントコラムの有効断面積(m2)
As =〔nD2/4 – nd2/4〕
・・・式11
D:ソイルセメントコラムの直径(m)
d:らせん溝付鋼管の直径(m)
Ra”’ = 1/Fs (Tu×ψ×L×Rpu)
・・・式12
Ra1”’:抜け出し耐力(らせん溝付鋼管の付着力と先端耐力の合力)(kN)
Fs:安全率 長期(常時)=3.0、短期(中地震時)=1.5
Tu:らせん溝付鋼管の付着力度(kN/m2)
Tu=(0.358qu+795) α
・・・式13
qu:ソイルセメントコラムの一軸圧縮強さ(kN/m2)
qu=Fcと仮定
α:溝面積とらせん溝付鋼管周面積の比
α=sg/S
sg:単位長さ当り溝面積(mm2)
S:単位長さ当りらせん溝付鋼管の周面積(mm2)
ψ:らせん溝付鋼管の周長(m)
L:らせん溝付鋼管長(m)
Rpu:らせん溝付鋼管の先端耐力(kN)
Rpu = 6×cu×Ao
・・・式14
cu:ソイルセメントコラムのせん断強さ(kN/m2)
cu=qu/2
qu=Fcと仮定
Ao:らせん溝付鋼管の先端閉塞断面積(m2)
パイルドラフトは地盤の支持力を活かすので経済的です