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トルネードパイル工法

トルネードパイル工法の特長と概要

トルネードパイル工法表紙

概要

トルネードパイルは、小規模建築物の地盤改良に多用されているソイルセメントコラム工法(深層混合処理工法)の芯部に外面らせん溝付鋼管を挿入したものです。 ソイルセメントコラム工法については、既に性能証明を取得しているアイ・マーク工法(GBRC性能証明 第16-14号 改1) を適用し、設計・施工管理を行うことで、良好な品質を確保しています。 芯材は、図1に示すように冷間製造された電縫鋼管を回転するリング状の突起付ダイス内に挿入し、引き抜き加工することで、管外表面を連続的かつらせん状に溝加工し、付着力の増大を考慮した鋼管を製造し、利用します。

図1
図1

特長

1.トルネード鋼管が心材

トルネード鋼管が心材

トルネードパイル工法は、らせん溝付鋼管の安定した材料強度と大きな付着力により、ソイルセメントコラム工法の短所であるコラム強度の低さ、及びコラム強度のバラツキを補うことで、ソイルセメントコラム工法の持つ、高い潜在能力を引き出し、高い支持力性能を発揮します。 また、ソイルセメントコラムは、曲げ、せん断、引張り荷重に対し耐力が小さく、水平力が発生するような構造物および地盤状況では設計が困難であるが、トルネードパイル工法は、曲げ、せん断、引張り荷重に対し強度が安定しているらせん溝付鋼管を芯材として用いるため、高支持力化と共にせん断耐力及び曲げ耐力を大幅に増大させることで、水平力にも対応出来る構造にしています。 さらに、高支持力化の実現は、改良本数の低減と改良径の縮小化をもたらし、固化材使用量及び発生残土量を大幅に低減することから、環境負荷に対して優れた性能を発揮します。

2.摩擦力が大きく、コラム強度が高い

 

3.水平力にも強く、安定した品質

 

4.残土量が少なく、環境に優しい

 


適用

適用地盤
  • 先端地盤:粘性土地盤、砂質土地盤(礫質土地盤を含む)
  • 周面摩擦考慮地盤:粘性土地盤、砂質土地盤(礫質土地盤を含む)
適用建築物
地上階 3階以下
建物高さ 13m以下
延べ面積 1500㎡以下

※平屋に限り3000㎡以下

適用工作物
擁壁 擁壁高 5.0m 以下
ボックスカルバート等

仕様

らせん溝付鋼管
らせん溝付鋼管
トルネードパイルの組み合わせ一覧
  ソイルセメントコラム径 D(mm)
400 500 600

らせん溝付鋼管径d(mm)

48.6
63.5
76.3
89.1
101.6
114.3
鋼管長さ
最大鋼管長 8.0m
最小鋼管長 0.5m
ソイルセメントコラムの仕様
コラム径D 400mm、500mm、600mm
先端余長C 400mm以上
設計基準強度Fc 砂質土:600~1200kN/㎡
粘性土:600~1000kN/㎡
ローム:600~800kN/㎡
固化材配合量 砂質土・粘性土:300kg/㎡以上
ローム:350kg/㎡以上
W/C 標準 70%
※試掘時の土質の状況により50%~120%の範囲内で設定する
変動係数
Vquf
砂質土:0.20
粘性土・ローム:0.25
羽根切回数 砂質土:500回/m 以上
粘性土・ローム:600回/m 以上
先端練返し 1.5D以上
らせん溝付鋼管の仕様
  らせん溝付鋼管の各種数値
外径d(mm) 48.6 63.5 76.3 89.1 101.6 114.3
材料名 RS-STK500 RS-STK400
母材の規格 STK500 STK400
厚さt(mm) 2.0 2.3 2.3 2.6 2.6 2.6
単位重量W(kg/m) 2.32(2.30) 3.51(3.47) 4.21(4.20) 5.50(5.55) 6.39(6.35) 7.25(7.16)

断面積(mm2)

295.6(292.8) 447.1(442.2) 536.6(534.7) 701.0(706.5) 813.4(808.6) 923.8(912.4)
らせん溝本数(本/周) 3 4
らせん溝角度(°) 10±2
らせん溝幅(mm) 19±10% 23±10% 23±10% 23±10% 26±10% 26±10%
らせん溝深さ(mm) 3.3±1.0 3.7±1.0 3.8±1.0 4.3±1.0 4.4±1.0 4.2±1.0
らせん溝間隔(mm) 270±10% 270±10% 340±10% 340±10% 510±10% 550±10%
引張強さ(N/mm2) ≧500 ≧400
降伏耐力(N/mm2) ≧355 ≧235
伸び(%) ≧6 ≧12
へん平性(- ) 7/8d 2/3d

※実測重量を基に計算した公称厚さの管の場合での値(括弧内の値は公称径の丸管として計算した値)


施工装置・施工設備

撹拌装置 ①撹拌翼 ②掘削翼 ③共回り防止翼

高回転型(標準タイプ)
(1)高回転型(標準タイプ)

共回り防止翼が撹拌翼を囲むように1箇所配置された標準タイプの撹拌装置。撹拌翼の間隔が広く回転しやすい形状のため、あらゆる地盤に適 している。

高撹拌型
(2)高撹拌型

共回り防止翼が連結して多層に入って おり、撹拌性能を高めた撹拌装置。粘性の強い地盤や有機質土地盤などのよ うに、充分な撹拌が必要な土質に適し ている。また、高速回転が出来ない高ト ルク型の施工機にも適している。

高掘削回転型
(3)高掘削回転型

高回転型の特徴を生かしながら、掘進性能を向上させた撹拌装置。硬質地盤や地中障害物が混入している地盤についても適している。

高掘削撹拌型
(4)高掘削撹拌型

高撹拌型の特徴を生かしながら、掘進性能を向上させた撹拌装置。粘性の強い地盤と硬質地盤が混在している地盤に適している。

施工設備概要
施工設備概要

施工手順

施工手順1-7
施工手順8-12
  1. 芯位置セット及びロッドの鉛直確認を行う
  2. セメントミルクを吐出しながら正回転にて掘削・混合撹拌する。
  3. 深度計により、設計深度まで到達したことを確認する。
  4. 1.5D分の先端練り返しを行う。(引上げ時は逆回転とする)
  5. 逆回転にて引き上げ工程に入る。
  6. 羽根切り回転をチェックしながら引き上げていく。
  7. ソイルセメントコラムの打設完了。
  1. ソイルセメントコラムの中心にらせん溝付鋼管を建て込む。
  2. 鋼管を繋ぐ場合は、下管を適切な位置で止め、上管を建て込む。
  3. 下管と上管との継手は、スリーブ継手又は溶接継手にて行う。
  4. 鋼管天端を所定の深度まで挿入する。
  5. 鋼管天端レベルに合わせてコラム頭部を修正する。
W/C例
標準 含水比が大きい(水位が高い) 含水比が小さい(水位が無い) 粘性が強い
砂質土 粘性土 砂質土 粘性土 粘性土
70% 50~70% 55~70% 70~110% 70~120% 60~100%

許容鉛直支持力式

許容鉛直支持力Raは、式Ⅰ.1.1に示す通り、Ra’とRa1の大小を比較し小さい方をRaとすることにより求める。

Ra = min(Ra’, Ra1)

・・・・式Ⅰ.1.1

ここで、Ra’は式Ⅰ.1.2に示す通り、地盤から決まるトルネードパイルの極限支持力Ru’を安全率で除し た値である。またRa1は、トルネードパイルの圧縮耐力であり、鋼管径、コラム径、鋼管長及びソイルセ メントコラムの設計基準強度Fcに応じて、表1より抽出し求める。
Ra’の算定方法を以下に示す。

Ra’ = Ru’/ Fs
  = (an’sAp+ BrN’fly)/ Fs

・・・・式Ⅰ.1.2

Ra’:地盤から決まるトルネードパイルの許容支持力
Ru’:地盤から決まるトルネードパイルの極限支持力
Fs:安全率 長期 (常時)=3.0、短期(中地震時)=1.5
α:先端支持力係数=142
βγ:周面摩擦力係数=14.3
N’s:先端地盤の平均N’値
Ap:改良体の断面積
N’f:周面地盤の平均N’値
L:周面地盤の長さ(m)
ψ:改良体の周長(m)

ここで、先端地盤の平均N’値及び周面地盤の平均N’値の算定方法を以下に示す。
N’s値は、図2に示す先端平均N’値を算定する範囲(芯材先端から800mm以内)の平均N’値と、先端支持地盤の層厚(鋼管長に400mmを加算した深度から3Dの範囲)の25cm毎のN’値を比較し、最も小さい値をN’s値とすることにより求める。周面地盤の平均N’値は、図2に示す周面地盤の平均N’値を算定範囲より算出し、N’fとすることにより求める。
なお、先端支持地盤の層厚とは、先端支持力を確実に確保するため、応力の影響範囲を考慮するための層厚で、鋼管長に 400mmを加算した深度から3Dの範囲と定義するものである。

 

*1:先端支持地盤の層厚とは、先端支持力を確実に確保するため、応力の影響範囲を考慮する地層厚で、鋼管長 +400mmの深度から3Dの範囲と定義する。なお、この範囲のN’値と先端平均N’値を比較して最も小さい値を先端地盤の平 均N’値(N’s値)とする。

図2 支持力算出方法概要図
図2 支持力算出方法概要図

なおN’値は、土質に応じて式I .1.3、式I.1.4より算出する。

砂質土地盤の場合

N’=2WSW+0.067NSW

・・・・・式Ⅰ.1.3

粘性土地盤の場合

N’= 3WSW+0.05NSW

・・・・・式Ⅰ.1.4

Wsw:SWSにおける荷重(kN)
Nsw:SWSにおける貫入1m当たりの半回転数(回)

また、先端地盤及び周面地盤の平均N値の適用範囲は表2のとおりとする。

表2 先端地盤及び周面地盤の平均N’値の適用範囲

鋼管長(L) 先端地盤の平均N’値 周面地盤の平均N’値
0.5L≦L<2.0m 3.0≦N’s≦14.0 0.6≦N’f≦6.6
2.0≦L<6.0m 1.5≦N’s≦14.0
6.0m≦L≦8.0m 0.3≦N’s≦14.0

許容支持力Raが負担荷重Pを上回っているか確認する。下回っている場合は、F2に戻り再検討する。

Ra≧P

Ra:許容鉛直支持力(kN)
P:負担荷重(kN)

水平支持力の検討

トルネードパイルにおける水平支持力の検討は、「2018年度版 建築物のための改良地盤の設計及び品質管理指針ーセメ ント系固化材を用いた深層・浅層混合処理工法一」[(一財)日本建築センター、(一財)ベターリビング発行]に基づいて行 い、トルネードパイル工法の水平支持力の検討とする。

載荷試験
載荷試験
押し抜き試験
押し抜き試験

設計フロー

設計フロー

※「2018年度版 建築物のための改良地盤の設計及び品質管理指針ーセメント系固化材を用いた深層・浅層混合処理工法-」[(一財)日本建築センター、(一財)ベタ ーリビング発行]に基づいて検討を行う


なぜソイルセメントコラム工法と同じ径でも高支持力なのか?

ソイルセメントコラムとの支持力比較

ソイル撹拌性能が良く、ばらつきが少ないこともあり、実杭載荷試験結果から得られた支持力算出用の係数値が大きくなっています。ソイル セメントコラム工法の支持力より、条件によって最小でも1.8倍、最大では4.2倍の高支持力となります。

ソイルセメントコラム比較倍率 砂質土 粘性土
先端支持力 1.8倍 3.7倍
周面摩擦力 4.2倍 2.2倍

ソイルセメントコラム工法の支持力式は、日本建築センター発行の建築物のための改良地盤の設計及び品質管理指針。トルネードパイル工法は、建築技術性能証明評価内容による。

支持力比較(先端支持)
支持力比較(先端支持)
支持力比較(周面摩擦)
支持力比較(周面摩擦)

高支持力のメカニズム 材料強度の有効利用

材料強度
材料強度
支持力特性
支持力特性

トルネードパイル性能を発揮した設計例

トルネードパイルは、ソイルセメントコラム・芯材鋼管のメリットを最大限に活かすことにより、一般のソイルセメントコラム工法と比較すると、材料強度、摩擦力、先端支持力が大きく発揮され、高い支持力が得られます。
右記の設計例では、同一地盤条件においてソイルセメントコラム工法と比較すると改良長を大幅に短く計画出来ます。それにより、改良面積・固化材料・発生残土量等が少なく抑えられ、経済性及び施工性において有利な設計が可能となります。

トルネードパイル性能を発揮した設計例

コラム配置図

コラム配置図

改良土量の比

改良土量の比

固化材料の比較

固化材料の比較

発生残土量の比較

発生残土量の比較

トルネードパイル工法の支持力

トルネードパイルの圧縮耐力 Ra1
トルネードパイルの圧縮耐力Ra1書き出し
許容支持力① φ400mm~φ48.6mm-t2.0mm-Fc800kN/㎡の場合
許容支持力① φ400mm~φ48.6mm-t2.0mm-Fc800kN/㎡の場合
許容支持力② φ400mm~φ48.6mm-t2.0mm-Fc1000kN/㎡の場合
許容支持力② φ400mm~φ48.6mm-t2.0mm-Fc1000kN/㎡の場合
許容支持力③ φ400mm~φ63.5mm-t2.3mm-Fc800kN/㎡の場合
許容支持力③ φ400mm~φ63.5mm-t2.3mm-Fc800kN/㎡の場合
許容支持力④ φ400mm~φ63.5mm-t2.3mm-Fc1000kN/㎡の場合
許容支持力④ φ400mm~φ63.5mm-t2.3mm-Fc1000kN/㎡の場合
許容支持力⑤ φ400mm~φ76.3mm-t2.3mm-Fc800kN/㎡の場合
許容支持力⑤ φ400mm~φ76.3mm-t2.3mm-Fc800kN/㎡の場合
許容支持力⑥ φ400mm~φ76.3mm-t2.3mm-Fc1000kN/㎡の場合
許容支持力⑥ φ400mm~φ76.3mm-t2.3mm-Fc1000kN/㎡の場合
許容支持力⑦ φ400mm~φ89.1mm-t2.6mm-Fc800kN/㎡の場合
許容支持力⑦ φ400mm~φ89.1mm-t2.6mm-Fc800kN/㎡の場合
許容支持力⑧ φ400mm~φ101.6mm-t2.6mm-Fc800kN/㎡の場合
許容支持力⑧ φ400mm~φ101.6mm-t2.6mm-Fc800kN/㎡の場合
許容支持力⑨ φ400mm~φ114.3mm-t2.6mm-Fc800kN/㎡の場合
許容支持力⑨ φ400mm~φ114.3mm-t2.6mm-Fc800kN/㎡の場合
許容支持力⑩ φ500mm~φ63.5mm-t2.3mm-Fc800kN/㎡の場合
許容支持力⑩ φ500mm~φ63.5mm-t2.3mm-Fc800kN/㎡の場合
許容支持力⑪ φ500mm~φ76.3mm-t2.3mm-Fc800kN/㎡の場合
許容支持力⑪ φ500mm~φ76.3mm-t2.3mm-Fc800kN/㎡の場合
許容支持力⑫ φ500mm~φ89.1mm-t2.6mm-Fc800kN/㎡の場合
許容支持力⑫ φ500mm~φ89.1mm-t2.6mm-Fc800kN/㎡の場合
許容支持力⑬ φ500mm~φ101.6mm-t2.6mm-Fc800kN/㎡の場合
許容支持力⑬ φ500mm~φ101.6mm-t2.6mm-Fc800kN/㎡の場合
許容支持力⑭ φ500mm~φ114.3mm-t2.6mm-Fc800kN/㎡の場合
許容支持力⑭ φ500mm~φ114.3mm-t2.6mm-Fc800kN/㎡の場合
許容支持力⑮ φ600mm~φ76.3mm-t2.3mm-Fc800kN/㎡の場合
許容支持力⑮ φ600mm~φ76.3mm-t2.3mm-Fc800kN/㎡の場合
許容支持力⑯ φ600mm~φ89.1mm-t2.6mm-Fc800kN/㎡の場合
許容支持力⑯ φ600mm~φ89.1mm-t2.6mm-Fc800kN/㎡の場合
許容支持力⑰ φ600mm~φ101.6mm-t2.6mm-Fc800kN/㎡の場合
許容支持力⑰ φ600mm~φ101.6mm-t2.6mm-Fc800kN/㎡の場合
許容支持力⑱ φ600mm~φ114.3mm-t2.6mm-Fc800kN/㎡の場合
許容支持力⑱ φ600mm~φ114.3mm-t2.6mm-Fc800kN/㎡の場合

コラム頭部処理例
コラム頭部処理例
施工機械例
機械分類 基本機種 トルク値
Type-I TRS-100シリーズ、
TRS-91(トラバース)

GT-1500(東亜利根ボーリング)
DHJ-12(日本車輌製造)
15~86kN・m
Type-Ⅱ TRS-55シリーズ、
TRE-55(トラバース)

GI-50C、GI-50C II、
GI-50C II (YBM)

GT-1000T3、GT2-1000
(東亜利根ボーリング)

DHJ-08(日本車輌製造) 
7~32kN・m
Type-Ⅲ

GT-750T
(東亜利根ボーリング)

SK30SR(神鋼コベルコ建機)
S-3D(シロタ)
DHJ-06(日本車輌製造)
GI-30C-3(YBM)

5~12kN・m
Type-Ⅳ TRS-55I(トラバース)

GW80A、GD50A
(アイチコーポレーション)

5~8kN・m
芯材建込み
芯材建込み
芯材挿入
芯材挿入
押し抜き試験
押し抜き試験
タイプⅡ例
タイプⅡ例
タイプⅣ例
タイプⅣ例