スーパータイガーパイルとは、
段付鋼管をソイルセメントコラム芯材に利用した工法です
概要
3タイプの仕様で最適な設計が可能です。
a. 標準タイプ
b. コンクリート充填タイプ
c. 杭頭補強タイプ
2つの材料で水平剛性が向上
鋼管ぐいと一体になっているソイルセメントコラムにより、水平地盤反力係数kHが向上し、大きな水平支持力を実現します。
先端翼付鋼管杭
φ 165.2mm(先端翼径450mm)
kH比較1
スーパータイガーパイル
φ165.2mm(ソイル径500mm)
kH比較 5.0
スーパータイガーパイル
φ 165.2mm(ソイル径800mm)
kH比較 19.7
(先端翼付鋼管杭を1とした場合)
鋼管杭との水平載荷試験結果比較
※スーパータイガーパイルについては、杭頭補強タイプにて比較
1) 長期に生ずる力に対する地盤の許容支持力
Ra=1/3{α・N・Ap+(β・Ns・Ls+γ・qu・Lc)φ}
2) 短期に生ずる力に対する地盤の許容支持力
Ra=2/3{α・N・Ap+(β・Ns・Ls+γ・qu・Lc)φ}
先端支持力式
土質 | α | β | γ |
砂質地盤 | 94 | 11 | ー |
礫質地盤 | 94 | 11 | ー |
粘土質地盤 | 96 | ー | 0.5qu |
鋼管杭とソイルセメントコラム径の組み合わせ一覧
ソイルセメントコラム径 Dc(mm) | ||||||
400 | 500 | 600 | 700 | 800 | ||
段 付 鋼 管 |
114.3, t6.0 | 〇 | 〇 | 〇 | ||
3.5 | 4.4 | 5.2 | ||||
139.8, t6.0 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | ||
2.9 | 3.6 | 4.3 | 5.0 | |||
165.2, t6.0 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | |
2.4 | 3.0 | 3.6 | 4.2 | 4.8 |
適用範囲
基礎ぐいの先端付近の地盤種類 | 砂質地盤、礫質地盤、粘土質地盤 |
基礎ぐいの周囲の地盤種類 | 砂質地盤、粘土質地盤 |
基礎ぐいの最大施工深さ | 16m |
適用する建築物の規模 | 500,000㎡以下の建築物 |
一般的な打設方法による施工サイクル図
くいの仕様
本工法に用いる段付鋼管は、表2-1に示す材料認定を取得した杭用段付鋼管とし、仕様を表2-2に示す。また、くい頭補強タイプに用いる鋼管は、JIS G 3444 一般構造用炭素鋼鋼管(STK400, STK490)とする。鋼管の仕様を表2-3に示す。
表2-1 段付鋼管の材料認定
建築基準法第37条第二号における材料認定 | |||
認定番号 | 名称 | 規格 | 製鐵所 |
MSTL-0371 | 杭用段付鋼管 | NSDP-400S | 東京製造所 |
MSTL-0459 | 杭用段付鋼管 | NSDP-400S | 鹿島製鐵所 |
MSTL-0460 | 杭用段付鋼管 | NSDP-400S | 和歌山製鐵所 |
表2-2 鋼管の仕様と機械的性質 ※鋼管の公差は、材料認定内容に準拠する
種類の記号 | 外径 (mm) |
厚さ (mm) |
降伏点又は 0.2%耐力(N/mm2) |
引張強さ (N/mm) |
降伏比 (%) |
伸び (%) |
NSDP-400S | 114.3 | 4.2 | 235以上 380以下 |
400以上 | 80以下 | 22以上 |
6.0 | ||||||
139.8 | 6.0 | |||||
165.2 | 6.0 |
表2-3 鋼管の仕様 ※鋼管の公差は、JIS G 3444(2010)に準拠する
鋼管径(Dp) | 厚さ(t) | 鋼管の規格 |
114.3mm | 3.5~8.6mm | STK400, STK490 |
139.8mm | 3.5~9.5mm | |
165.2mm | 4.5~11.0mm |
施工指針
本工法を行う際は、現場の地盤状況を事前に把握するため、資料調査(ペーパーロケーション)および現地調査を実施し、総合的に地盤を判断する。
○ 資料調査(ペーパーロケーション)
基礎ぐいの設計や性能を確保するためには、建物概要や地形、土地の履歴等を把握することが非常に重要である。従って下記に示すような既存資料を適宜照査し地盤を判断する。
- 設計図書(各階平面図、配置図、基礎図等)
- 土地条件図、地形分類図
- 地形図、旧版地形図
- 造成図(大規模造成地などで作成しており、新旧の地形状況や盛土量が把握出来る図)
- 地質図・地盤図
- 近隣ボーリングデータ
- 空中写真
○ 現地調査
本工法を行う際は、計画建物中央付近にてボーリングによる地盤調査を1箇 所以上実施する。地盤調査では、くい先端より下方に5Dc(Dc:ソイルセメントコラム径)以上の範囲(以下、くい先端下部地盤)における地盤情報を把握し、αを適用できる地盤であることを確認する。ただし、くい先端下部地盤における地盤情報が既往の調査等により明らかな場合は、この限りではない。資料調 査により、地形の傾斜や不均一な造成工事が行われた地盤等の場合、調査ポイ ントを適宜増やして地盤状況を把握する。その際、スクリューウェイト貫入試験や大型動的コーン貫入試験、ミニラム試験を併用し、地層の傾斜や造成状況などを詳細に把握することも有効である。
また、ボーリングによる地盤調査の際に採取した資料から、基礎ぐい先端付近地盤及びソイルセメントコラム周辺地盤の改良対象層を特定し、サンプリングした資料を使用して配合試験を実施する。周辺地盤における同一地層に おいて、配合試験が行われている場合は、その結果を利用して配合計画を設定することが出来る。ここでいう改良対象層とはソイルセメントコラムの品質が最も確保しにくい場所の地盤をいい、土質分類では砂質土、粘性土、火山灰質粘性土の順に確保しにくくなる。その他に改良対象層となり得る地盤の例を表3-1に示す。明確に判別できない場合は、配合試験を複数実施する。
○ 適用する地盤の種類
1) 基礎ぐいの先端付近の地盤の種類:砂質地盤、礫質地盤、粘土質地盤
2) 基礎ぐいの周囲の地盤の種類: 砂質地盤、粘土質地盤
なお、地盤の種類は、建築基礎構造設計指針(日本建築学会:2001改定)に従い「地盤材料の工学的分類法」(地盤工学会基準:JGS0051-2009)に基づいて分類されたものとする。基礎ぐいの先端付近の地盤において、砂質地盤とは砂質土に区分される地盤であり、礫質地盤とは礫質土に区分される地盤であり、粘土質地盤とは粘性土および火山灰質粘性土(各種ローム)に区分される地盤である。
また、基礎ぐいの周囲の地盤において、砂質地盤とは砂質土および礫質土に区分される地盤であり、粘土質地盤とは粘性土か火山灰質粘性土に区分される地盤である。
○ 基礎ぐいの最大施工深さ
基礎ぐいの最大施工深さは、くい施工地盤面から鋼管ぐい先端までの長さとし、くい先端地盤が砂質地盤、礫質地盤、粘土質地盤のすべてにおいて16mとする。ただし、130Dp(Dp:鋼管径)以下。
- 適用する建築物の規模:各階の床面積の合計が500,000㎡以下の建築物に適用する。
- 礎ぐい軸部の許容軸方向力:基礎ぐい軸部の許容軸方向力の算定につ いては、GBRC性能証明第15-23号に示される許容軸方向力以内とする。
○ 平均N値の算出方法
先端平均N値(N)または、周辺地盤の平均N値を算出する場合、平均値を算出する範囲の土質が同一な場合、図3-1.aに示すようにN値の測定点と測定点の中央でN値を区切り、範囲内のN値と層厚から平均値を求める。平均値を算出する地盤の範囲内に地層境界がある場合は、地層境界にてN値を区切り、範囲内のN値と層厚から平均値を求める。
基礎ぐいとソイルセメントコラム間に働く各種応力
基礎ぐいとソイルセメントコラム間の付着力度 基礎ぐいとソイルセメントコラム間に働く付着力度の 関係式は(3.1)式による。
T=(0.34qu+174) α
・・・(3.1)
基礎ぐい先端部の支圧強度
基礎ぐいの先端に働く先端支圧力の関係式は(3.2)式による。
Ps=3.0・Fcs・APS
・・・(3.2)
ソイルセメントコラムのくい周辺部設計基準強度Fc 及び先端部設計基準強度Fcsの仕様
本工法は、鋼管ぐい頭部に建物荷重が作用し、その荷重が鋼管ぐいからソイルセメントコラムへ伝達され、ソイルセメントコラムと周辺地盤の間に働く抵抗力により支持する工法である。従って、本工法が申請している周面摩擦力及び先端支持力の極限値(長期の3倍)が作用した場合でも、鋼管ぐいとソイルセメントコラムが付着切れすることなく、一体となって挙動するような仕様とした。安全が確保できるソイルセメントコラムのくい周辺部設計基準強度Fcおよび先端部設計基準強度FcsをP.10に示す。また、周辺部から先端部まで設計基準強度及び先端部設計基準強度を満足する配合とする。
本工法におけるソイルセメントコラムの変動係数Vqufは、0.25とする。変動係数の根拠については、GBRC性能証明第06-12号改4にて証明されている。
図3-1 平均N値算出方法例
a.土質が同じ場合
図3-1 平均N値算出方法例
b.土質が複数ある場合
図3-2 ソイルセメントコラム部分の設計基準強度
充填コンクリート
充填コンクリートの規格は、呼び強度21N/mm2 ~ 60N/mm2、粗骨材の最大寸法25mm、スランプ値18cm~25cm±2cm 又はスランプフロー値30cm~65cmを満たすものとする。
継手
1) 溶接継手
くい軸部材を継ぐために用いる溶接材料は、JASS6第3節に規定されたJIS規格品またはこれらのJIS規格同等品とし、寸法および溶接条件に適したものとする。
また、らせん鉄筋およびずれ止め鉄筋をくい軸部に溶接する際に使用する溶接材料も同様とする。本工法に適用可能な溶接材料の規格を表3-2に示す。
表3-2 溶接材料の規格一覧
規格番号/種類 |
JIS Z 3211 軟鋼, 高張力鋼及び低温用鋼用被覆アーク溶接棒 |
JIS Z 3214 耐候性鋼用被覆アーク溶接棒 |
JIS Z 3312 軟鋼, 高張力鋼及び低温用鋼用のマグ溶接及びミグ溶接ソリッドワイヤ |
JIS Z 3313 軟鋼, 高張力鋼及び低温用鋼用アーク溶接フラックス入りワイヤ |
JIS Z 3315 耐候性鋼用のマグ溶接及びミグ溶接用ソリッドワイヤ |
JIS Z 3320 耐候性鋼用アーク溶接フラックス入りワイヤ |
2) 機械式継手
本工法にて使用する機械式継ぎ手は、性能、耐力が第三者機関により認められたものとし、その証明内容範囲内にて運用する
固化材液
(1) セメント系固化材
本工法で使用する固化材は、現場の土質、設計基準強度、周辺環境への影響を考慮して決定する。表3-3。
表3-3 主要な固化材およびJIS規格品の一覧(2015.8現在)
用途 | 固化材名 | 固化材メーカー |
一般軟弱土用 | ユースタビラー10 | 宇部三菱セメント(株) |
タフロック3E型 | 住友大阪セメント(株) | |
ハードキープP-430 | (株)トクヤマ | |
ジオセット200 | 太平洋セメント(株) | |
高有機質土用 | ユースタビラー20、30、40 | 宇部三菱セメント(株) |
タフロック4型 | 住友大阪セメント(株) | |
ハードキープP-310 | (株)トクヤマ | |
ジオセット223、225 | 太平洋セメント(株) | |
特殊土用 | ユースタビラー50、52 | 宇部三菱セメント(株) |
タフロック3E型、2000型 | 住友大阪セメント(株) | |
ハードキープP-530、540、630 | (株)トクヤマ | |
ジオセット223、225 | 太平洋セメント(株) | |
JIS規格品 | 普通ポルトランドセメント | JIS R 5210 |
早強ポルトランドセメント | JIS R 5210 | |
高炉セメントB種 | JIS R 5211 |
(2) 各種添加剤
本工法で使用する各種添加剤は、現場の土質状況、打設計画、気候等を考慮して決定する。表3-4に主要な各種添加剤の一覧を示す。それぞれの添加剤は、性能が確認されているものを使用する。
表3-4 主要な各種添加材の一覧(2015.8現在)
用途 | 添加剤名 | 添加剤メーカー |
硬化遅延剤 | ジオリター10、20、30 | (株)フローリック |
ポゾリスNo.89 | BASFジャパン(株) | |
分散剤 | ジオスパーK、ジオスパーF1、F10 | (株)フローリック |
ポゾリスNo.70、レオビルド4000 | BASFジャパン(株) |
注入混合撹拌
掘進速度は、スクイズポンプの吐出能力及び施工機械の回転能力を考慮して、固化材液が各深度毎に均等に注入し、且つ、所定の羽根切り回数以上を確保できる速度にて行う。表3-5に羽根切り回数の基準値を示し、表3-6に掘進速度の一例を示す。
表3-5 羽根切り回数
土質 | 羽根切回数=有効撹拌翼枚数×回転数/m |
粘土質地盤 | 600回/m以上 |
砂質地盤 | 500回/m以上 |
表3-6 掘進速度の一例 ※固化材配合350kgf/m2、W/C-60%、攪拌翼8枚とした場合
吐出能力(L分) | 回転能力(rpm) | 掘進速度(m/分) | 羽根切り回数(回/m) |
40 | 30~50 | 1.0 | 240~400 |
60 | 40~60 | 1.5 | 208~320 |
80 | 60~80 | 2.0 | 240~320 |
ソイルセメントコラムの打ち止め管理
本工法は、硬質な支持層に定着させない摩擦タイプと定着させる支持タイプの2種類があり、それぞれの管理手法について以下に示す。
a)摩擦タイプ(N≦10の地盤に適用する)
現状GLと設計GLの関係を把握し、地盤調査結果を見ながら設計計画深度まで確実に施工するための深度管理を打ち止め管理とする。
b)支持タイプ(N>10の地盤に適用する)
現状GLと設計GLの関係を把握し、地盤調査結果を見ながら施工を実施する。その際、貫入トルク値又は貫入速度の状況が地盤調査結果の状況と相関していることを確認し、打ち止め管理とする。トルクが上がらない地盤の場合は、深度管理に加え貫入状況を考慮して適切に打ち止めを行う。
先端処理
先端処理は、予定深度まで撹拌装置が到達した後、改良径Dの1.5倍以上の再撹拌を行う。
先端処理時の掘進・引き上げ速度の設定は、図3-3に示す。
表3-7 セメントスラリーの仕様
固化材添加量 | 配合試験結果から求めた計画配合量とする |
W/C | 標準70% ※試掘時の土質状況により50%~120%の範囲内で設定する |
用途 | 機械名 | 能力 | 重量(t) |
混合撹拌、くいの打設 | 施工機 | 5~100kN・m | 7~20 |
セメントスラリーの製造 | プ ラント | 300~8000/バッチ | 1~2 |
移動式クレーン | 2~5t車 | ー | |
セメントスラリーの圧送 | スクイズポンプ | 30~2000/min | 0.1~0.3 |
芯材の建て込み | 建柱車 | 2~6t吊り | 2~6t |
クローラークレーン | 4.9~60t吊り | 9 ~40 | |
ラフタークレーン | 16~65t吊り | 12~40 | |
泥土処分 | バックホウ | 0.1~0.4㎥ | 4 ~15 |
ダンプトラック | 4~10t | ー |
くい周辺部設計基準強度Fc
くい仕様およびソイルセメントコラムの先端部設計基準強度Fcs
施工データ例
SI-SP-1 逆井試験場 施工試験データ表(3mまで時前土抜きした場合の施工例)